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XML DB、そのアナーキーな魅力 「第2回:犬で車を売る(前編)」

株式会社ジャストシステム
コンサルティング部 部長 加藤 哲義
(旧 株式会社サイバーテック 取締役)
変容する世界のスナップショット

森羅万象は生きており、常に形を変えています。社会もそう、マーケットもビジネスもそう、人の世でおこることは刻々と変容しています。

しかし情報処理システムというのは、そうした対象のある時点でのスナップショットを下地にモデル化をします。常に変容しつづけるものをシステム化することは困難なので、静的なスナップショットを撮らざるを得ないのです。そのシステムを実装するデータベースのスキーマは、固定的であってもやむを得ないものと思われてきました。次のスナップショットを撮るタイミング(すなわちシステムを再構築する数年後)までは対象世界の変容には目を閉じてしまいましょう、ということになります。

しかし設計、企画、営業活動、といった知的生産活動を支援するようなシステムでは、使いながらマーケットやビジネスのニーズに合わせて、形の見直しや拡張をしていくことが必須といえます。これは固定化こそシステムの前提である、という従来の常識と相反するものなのです。

XML DBはこの常識に風穴を空ける可能性を秘めています。先覚的ユーザがXML DBに惹かれるのは、「変容しつづける対象世界に追随していくシステム」というものを実現できるのではないか、という予感を起こさせてくれるところにあると思います。

これから、そんな例を紹介してみましょう。

ベテラン営業マンのナレッジをシェア

ある中古車販売の会社はベテラン営業マンのノウハウを組織的にシェアさせるような情報システムを模索していました。

ベテラン営業マンは顧客を観察し、ちょっとした会話をいとぐちに、メーカーもタイプも年式も多種多様な在庫のなかから最適な車を直感します。そして一瞬にして買う気にさせる殺し文句をつむぎだします。これは勘と経験の世界です。

たとえばある商談事例ですが、お客さんは50代の上品な紳士です。なんとなく冷やかしの感じです。ベテラン営業マンのAさんが接客にあたりました。何気ない会話から、この紳士が中堅企業の役員であり、これまでブルーの4ドアセダンに乗ってきたがいま漠然と買い替えを検討していること、車庫は自宅の敷地内にあること、二人の子供は就職して自立しており、妻と二人暮らしであること、最近大型犬を飼いだしたこと、などが聞き出されました。

ここでAさんは直感的にまっ赤なワンボックスワゴンを薦めます。そして意外そうな顔をしている客に向かって言います。「これなら大きなワンちゃんと郊外のドライブが楽しめますよ」。

この商談は成約にいたりました。客はセカンドカーとしてこの車を購入したのです。

車と顧客のプロファイリング

直感的にまっ赤なワンボックスワゴンを薦めた、と書きましたが、Aさんの頭のなかでは経験的に蓄えられた色々な知恵が瞬時に連鎖しているのです。

  • 現在の車はブルーのフォードアセダン
    白色の車を乗っている顧客は次も白を選ぶ傾向があるが、ブルーとかだと意外に対極のレッドとかに興味が振れることがある
  • 家族は息子が独立して妻と二人
    社会的なステータスから考えて、家族が減ったからと言ってグレードを下げたセダンに乗り替えることはまず無い。といってもっと高級なセダン車は中古では買わない。むしろ家族を離れた自由な発想でセカンドカーを推薦したほうが得策。
  • 車庫は敷地内にある
    背の高いタイプの車でも大丈夫そうだ。
  • 最近大型犬を飼い出した
    堅実に50代を向かえながら、人生に新しい価値やロマンを見出したくなってきているのではないか。これが大型犬に象徴されるのでは。ロマンを触発するような車をセカンドカーとして推奨したらどうか。しかしこの年代に対して「人生のロマン」なんて青臭い言葉は禁物。無意識にそれを喚起させるセールストークが必要・・・・。

こういう思考の結果、Aさんは意表をつくまっ赤なワゴンを提案し「これなら大きなワンちゃんと郊外のドライブが楽しめますよ」という一言で顧客を落としたわけです。この車のスタイルと色、そしてペットとのドライブという発想によってこの紳士は今の自分が真に欲するもの(多分それはしのびくる人生の秋に対するささやかな抵抗)を発見したわけです。

「勘と経験」のシステム化

こうした成約事例やベテラン営業マンの勘と経験をシステム化し、組織のなかでシェアできたらいいのですが、そんなことが可能でしょうか。まず営業マンの勘と経験をどこまで近似的にモデル化できるかです。

営業マンの頭の中では売るべき商品の特性が整理されており、顧客の情況に合わせて最適な特性を束ねて商談を構成します。商品と顧客に対するプロファイリングの精確さとマッチングの勘こそが営業マンのスキルといえます。ただ商品ごとに特性が異なり、また営業マンごとに特性の見方が異なるため、システム化しようにもバリエーションが豊富すぎてRDB化が難しい。

商品ごとに顧客特性は数も重要度も異なる

RDBの設計は、対象の中の無用な枝葉をできるだけ裁断し、反復性のあるもの、共通性のあるもののみでテーブルを構成しシステムとして固定します。これは定型業務には有効です。しかし「営業スキル」のような人間的なモデルは枝葉、つまり例外性や一回性も重要なのです。かくて「勘と経験」は情報システムに乗りにくくなります。

現場ナレッジの容器、スプレッドシート

Aさんは自分の商談をMS-Excelでまとめています。商談のなかで発見した車の顧客特性を「消費者イメージ」として記入しています。これはAさんの営業虎の巻とでもいうものです。Excelを利用するのは、経験的に発見した新たな項目をどんどん増やしたり見直したりできるからです。また車ごとに異なる項目の種類やプライオリティを自由に設定できるからです。

A君の営業虎の巻

この例のように、ホワイトカラーの経験的なナレッジは、情報システム部門の設計するデータベースにではなく、案外MS-Excelのようなスプレッドシートに容れられています。スプレッドシートはデータの構造も値も任意の「セル」で一元的に表現できます。データの構造と内容の決定権が個人にゆだねられているので、現場の経験的なナレッジの容器として利用されやすいのです。

しかしスプレッドシートはデータの共有性という点では問題があります。構造を好きにできることが裏目に出て、各ファイルに横串を通すような統一的な検索やデータ処理をすることが難しいのです。

そもそも情報の統合とナレッジは相容れないものなのです。統合のためには情報を共通の型に入れなくてはなりません。型を与えられた瞬間に情報は生成発展するナレッジとしての可能性を閉ざされ陳腐化します。このジレンマをシステム的にどう克服するのか。そのヒントはXML技術にありました。

つづく

株式会社サイバーテック

「ITによる社会貢献」を実現させるため、日本を代表する魅力的なITカンパニーを目指しているXML分野のリーディングカンパニーです。主に各種ミドルウェアとフィリピン・セブ島の自社開発センターを活用した受託開発及び、国産のXMLデータベース製品「CyberLuxeon」(サイバーラクセオン、旧称「eXcelon」)の製品企画、開発、拡販活動を行っています。2006年12月には、日本語全文検索「ターボサーチ機能」を搭載した最新版の「Cyber Luxeon Ver2.0」を出荷しております。
https://www.cybertech.co.jp/

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